アクアリウムをやっていて一番頻繁に出会うトラブルが水槽内に発生するコケです。
これは初心者に限ったことでは無く、経験が豊富でもコケに悩まされるケースは多いです。
アクアリウムにコケは付き物でコケと上手く付き合っていかないといけません。
そこで今回はコケの発生原因や予防、対処方法について基本的なことをまとめました。コケ対策の参考になれば幸いです。
主なコケの発生原因・予防
コケが発生する代表的な原因は飼育水の富栄養化と、ろ過バクテリアが定着しておらず水質が不安定な場合の二通りがあります。
では具体的にどのようなケースでコケが出るのか例をあげていきます。コケが発生しやすい状況を把握しておけばコケ発生の予防に繋がると思います。
水換えの量が少ない
水換えはコケを予防する基本中の基本となるメンテナンスです。出来れば1週間に1回、最低でも2週間に1回、1/3程度を水換えすることによって水中内の余分な汚れを排出します。
また新しい水は水草にとってもいい影響を与えるので、水換えをすることによって、より良い水槽内の環境が作れることになります。
水槽立ち上げから1~2ヶ月しか経過していない
水槽をセットした初期は低床の養分が大量に溶け出し、また、ろ過バクテリアの数も少ないことからコケが発生する好条件が揃っています。
この時期に出やすいコケは茶ゴケ(珪藻)と呼ばれ、柔らかく除去も簡単な場合がほとんどなので焦る必要はありません。
手作業でホースやブラシで水槽の外へ出しつつ、コケ取り生体を何匹か入れれば比較的簡単に除去出来ます。
照明が強すぎる・照射時間が長い
光が強いライトは水草を育ててくれますが、同時にコケの発生リスクも高まります。
光が水槽のサイズに対して強すぎたり照明時間が長すぎたりする場合は、それがコケの原因と一つになっている可能性が高いです。
照射時間は8時間程度が妥当で、それでもコケが酷い場合には6時間に短縮しても構いません。
フィルターが水槽サイズに適していない
ろ過機が水槽に対して小さすぎると、ろ過能力不足に陥りいつまでたっても水質が安定しない場合があります。
逆に大きすぎるフィルターも水流の強さがコケの原因となる場合もあるので水槽サイズに適したフィルターを選ぶことが基本となります。
水槽内に生体が多すぎる
魚やエビなどの生き物が多ければ多いほど、水は汚れやすくなります。
汚れと言うのは餌の残りであったり生体が残した糞ですが、これらはコケの発生に直結します。
ですから生き物を増やしたい場合にも一気に増やすのではなくて、徐々に増やしていく方がコケ発生のリスクを下げることに繋がります。
コケ取り生体が少ない(居ない)
コケが出ていない状態でも予防の為に予め、コケ取り生物を入れておいた方がいいです。
目安として60cm水槽であればエビ20~30匹、オトシン2~3匹程度入れておけば、かなりの予防効果が期待出来ます。
餌をやりすぎている
餌の食べ残しはコケを誘発する大きなリスクになりますので、人間と同じように腹八分目(少な目)を心がけて食べれる分だけ餌を与えましょう。
水槽内に水草が少ない
コケの予防に効果的なのが水草を多めに入れることです。水草は水槽内の養分を吸ってくれますから、必然的に水草が多い方が水中内に余分な養分が残らないで済みます。
予算に限りがあるのならマツモや浮き草など、安価で養分の吸収に定評がある水草を入れてしまうの一つの方法です。
コケの種類・除去方法一覧
コケにも様々な種類があり、それぞれ微妙に対処法が異なりますので出たコケの種類を確認し、それに応じた対策を講じます。
各コケに対応した生体の紹介は下記の記事でもまとめているので宜しければ参考にして下さい。
以下、水槽内で良く発生する代表的なコケを紹介します。
茶ゴケ
茶色く柔らかいコケです。水槽壁面や低床、水草にまとわりつき特にセット初期に発生することが多いですが除去するのはコケの中でも簡単な方なので焦らずに対処します。
茶ゴケの特徴、発生原因など
茶ゴケは水質が不安定な時期に出易く、弱い光が長く当たっている、直射日光が水槽に差し込んでいる等の状況で良く増えやすいです。
発生する場所も水草、低床、壁面など広範囲に及びます。
また茶ゴケの発生原因として水道水に含まれるケイ素が原因となる場合が多いようです。
他のコケは富栄養化で出やすいですが水換えを頻繁に行っていても茶ゴケが発生するのは、このケイ素による影響が大きいと思われます。
茶ゴケの対処法
まずは出来る限り人力で、ブラシやホースを使って茶ゴケを取り除きます。
また茶ゴケはヤマトヌマエビを筆頭にエビの仲間やオトシンが得意とするコケでもあるので、例えば60cm水槽にヤマトヌマエビ20匹、オトシン数匹程度、入れておけば数日の内にほとんど無くなっていることが期待出来ます。
またどうしても茶ゴケが無くならないという時は一時的に遮光するのも効果的です。
茶ゴケをもっと詳しく解説した記事を追加で作成しました
糸状コケ
水草や流木に発生しやすい、ふさふさするタイプを代表とする糸状のコケです。
糸状コケは種類が多く形や色も様々なタイプがあります。
糸状ゴケの特徴、発生原因など
糸状ゴケは先に記した主なコケの発生原因の各項目が当てはまります。
色々なタイミングで発生しますが、水質が安定していない状態で富栄養かつ強い光を与えている場合、特に発生し易いコケだと思います。
糸状コケの対処法
まずヤマトヌマエビが食べてくれれば、それが一番なのでヤマトヌマエビを入れてみましょう。
コケのタイプによっては効果が薄い場合もあるため、その際はサイアミーズ・フライングフォックスを入れて様子を見ます。
水草に大量に付着してしまった場合はトリミングして取り除いて構いません。
また大量発生してしまって生体だけの除去では無理そうであれば、水位を下げ3~5倍程度に薄めた木酢液を筆塗り10分程度放置します。注水後はコケが弱くなっているのでメンテナンスフィッシュ達が食べてくれます。
それでも効果が無い場合は一週間程度、遮光してしまうのも手です。遮光後はコケが弱くなるので今まで食べてくれなかったコケを食べてくれるようになる場合があります。
アオミドロ
イメージとしては糸状コケが更に強力な束になって、緑色のトロロのような状態になったものです。
水草や低床など水槽の至る場所にまとわりつきます。
アオミドロの特徴、発生原因など
アオミドロは基本的に外部からの持込によって発生します。購入した水草にわずかに付いていたものが自分の水槽内で増えてしまうというパターンです。
その為、一度アオミドロが出た水槽の水は他に使わないように注意が必要です。
アオミドロの対処法
まずは人力で可能な限り取り除きます。特に歯ブラシが有効で綿菓子を作る要領で絡め取るようにすると取れやすいです。
平行してヤマトヌマエビにも食べてもらいます。特に応急処置的に大量投入すると効果が表れやすいです。
また完全に遮光しながらヤマトヌマエビに食べてもらうという手段もあるので、もし早急に改善したいのであれば遮光も選択肢の一つだと思います。
クロヒゲコケ
黒くフサフサしたヒゲのような見た目のコケで、成長が遅い水草や流木の他に、ヒーターやフィルターの出水口付近にも良く出ます。
クロヒゲコケの特徴、発生原因など
初期で出ることは少なく中、長期運用した水槽で出ることが多いので、水槽内である程度、有機物が蓄積された状態だと出やすいコケと言えます。
他にも水流の強さや水換え不足、pH・硬度が高いこと、リン酸の蓄積などが原因と言われています。
クロヒゲコケの対処法
器具についたコケは水槽内から外して漂白剤などで洗浄します。流木や石についたものは固めのブラシでそぎ落としホースで吸出します。
また水草についたものはサイアミーズ・フライングフォックスに食べてもらうようにします。アルジーライムシュリンプも少しは食べますが除去するまでの能力は無く予防程度に考えておくといいと思います。
生体だけでは除去出来ない場合は、先にも紹介した木酢液での処置が有効なので、大量についてしまった場合は木酢液を有効活用しましょう。
ちなみにクロヒゲコケは遮光しても他のコケのように弱くなることはありません。
※木酢液(もくさくえき)を使ったコケ除去について
木酢液とは木材を燃やした時に発生する水蒸気が含まれる煙を集め液体状にしたものです。
主に園芸での害虫駆除や入浴剤・消臭剤など色々な場面で利用されるものでホームセンターに行けば必ず置いています。木酢液は強い酸性を示し水槽内に発生したコケに対しても有効で、水草も傷めにくいことから筆者は良くお世話になっています。
但し商品によって純度の違い等もある為、品質が良さそうな製品を選ぶのは勿論のこと使用する際にはまず10倍程度に薄めてみて、どんな反応があるか確認しつつ慎重に行うようにして下さい。
少量であれば水中に入っても大丈夫ですが、木酢液は強酸性のため大量に入れてしまうと水質が急変してしまいます。万全を期すならpHを計りながら添加した方がいいと思います。
木酢液で処理する方法は以下の記事で詳しく紹介しています。
藍藻(らんそう)
青っぽい緑のねっとりしたノリ状のコケです。正確にはシアノバクテリアという細菌の一種で低床や水草に発生します。
藍藻の特徴、発生原因など
アンモニア臭を発し(まれに無いタイプも有り)、また環境に関わらず増殖スピードが非常に速いことが特徴です。発生原因は、リンや窒素が過剰になっている状態で強光や日光が差し込んでいると発生しやすい傾向があります。
また水流が無く酸素が行き渡っていない嫌気環境で良く見られます。そのため栄養分が豊富な湖やダムでもアオコタイプの藍藻が発生するケースが良く問題となっています。
藍藻の対処法
藍藻は一度発生してしまうと完全に無くすのが難しいコケですので発見次第、早急に対処することが大切です。
まず藍藻を発見したらホースで吸い出させる部分は可能な限り低床ごと吸出しを行います。
生体ではブラックモーリーが藍藻を食べますが藍藻が発生しやすい、水草とガラス面の狭い隙間などには入っていけないのでブラックモーリーだけで藍藻を完全に除去することは無理だと考えて下さい。
他の方法としては藍藻用のエクスタミンという薬品も売られているのでそちらを利用するのもいいでしょう。それから藍藻は細菌に分類されるため細菌性感染症の魚病薬であるグリーンFゴールドを使用することも良く用いられる方法です。
また藍藻は光合成を行う細菌であることから他のコケと同様、遮光も一定の効果があります。
実際に筆者の水槽で藍藻が発生したので根絶を目指し試行錯誤した記録を下の記事にまとめました。
スポット状コケ
緑の斑点状のコケで主に水槽ガラス面やアヌビアスナナなど成長が遅めな水草の表面に付きやすいです。
スポット状コケの特徴、発生原因など
他のコケと比べ非常に固く、スポンジ等で擦っても中々取れない頑固なコケです。
どんな水槽にも出てしまうコケですが照明が強すぎたり照射時間が長すぎるのが一因となっていると考えられています。
スポット状コケの対処法
ガラス面に発生したコケはスクレーパーで除去します。水草に付いたものは対しては木酢液を使用するかトリミングで切った方が早いでしょう。またオトシンクルスや石巻貝を入れておくと予防にもなります。
アオコ
グリーンウォーターとも呼ばれ植物プランクトンが水中に蔓延し水を緑一色に染めてしまう状態です。水質が不安定な時期に出やすいです。
アオコの特徴、発生原因など
強光、富栄養の環境下で、特にろ過がうまくいってない時に出やすいです。また太陽光が水槽内に無闇に差し込んでいると発生原因となる場合もあります。
アオコの対処法
まずは水換えを毎日1/3~1/2程度行い様子を見てみましょう。同時に照明をあてる時間を短めに調節します。また殺菌等を持っていれば早急に改善されることが報告されているので殺菌灯を導入するのもいいでしょう。
生体ではマシジミ(淡水シジミ)とオオタニシが効果があるとされています。
【まとめ】コケと上手く付き合う方法
長くなってしまったのでコケ対策のポイントを簡単に振り返りたいと思います。
- 水換えを定期的に行う(富栄養化の予防)
- 汚れを蓄積しない(フィルター等の定期的な掃除)
- コケ取り生体を入れておく
- 適切な光(時間・光の強さ)を与える
- コケが出たらすぐに対処
ただ上記のような管理をしていても出るときは出てしまうのがアクアリウムのコケです。
特に水草水槽でコケは付き物で、何故かと言うとコケと水草の生長条件が重複している部分があるからです。なので全くコケが出ない水槽というのは貧栄養すぎて水草の生長も期待できないはずです。
コケが出るのが嫌でアクアリウム自体を辞めてしまうという話も聞きますが、コケはアクアリウムに付き物だと思って臨機応変に対処していけば、水槽を綺麗に保つことが出来るようになると思います。