水槽立ち上げから生体投入までの期間やタイミングについて

水槽を新しくセットしても、すぐに魚やエビなどの生体は入れるべきでは無いという事は、アクアリウムの基本であり書籍等でも良く触れられることです。

今回は具体的に、どの位経てば入れていいのか、理由もなるべくわかりやすく解説し、ろ過や立ち上げの大まかな流れを理解出来るように記事を作成しましたので参考にしてみて下さい。

目次

水槽を立ち上げてすぐに生体を入れてはいけない理由

まず初めに何故、立ち上げたばかりの水槽に魚やエビを入れたら良くないのかを説明します。

結論から言うと、水槽内のろ過サイクルが出来ていないからです。

水槽に魚を入れるとフンや尿や餌の残りによって水が汚れていき、生体にとって有害な物質(アンモニア・亜硝酸・硝酸塩)となります。

その汚れを微生物(=ろ過バクテリア)の働きによって毒素を無害化する環境を作らないと毒素の蓄積によって最悪、生体は死んでしまいます。

毒素を分解してくれる、ろ過バクテリアは水槽内に自然発生しますが大体1~2ヶ月(環境によって異なります)は期間を要しますので、その間は水質が不安定な状態と言えばわかりやすいかもしれません。

要は水槽を立ち上げたばかりの期間は水を浄化する作用が働いていなく、魚やエビにとって過酷な環境になっているとイメージして下さい。

水槽内に発生する毒素について

上でも軽く触れていますが生体にとって毒となる物質のアンモニア、亜硝酸、硝酸塩について、それぞれの特徴について簡単に説明します。

アンモニア(毒性:強)

毒性が一番強く、魚のフンや尿、餌の食べ残し、枯れた水草などが原因で発生し水槽内の総アンモニア量が0.25mg/L以上だと生体にとって危険な数値になります。

アンモニアは水槽セット初期に発生しますが通常、二週間程度で、ろ過バクテリアによって毒性の低い亜硝酸に分解されます。

アンモニアの測定は以下のキットで行います。

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アンモニアはpHが酸性であれば、(毒性がほぼ無い)アンモニウムイオンに変化します。pHがアルカリ寄りになれば、逆にアンモニアの比率が上がります。その境目は7.0で、つまりpHが7.0未満であれば、アンモニアは99%検出されません。しかし、アンモニウムイオンとして存在しているため、上記のキットではアンモニアとアンモニウムイオンの総量を測定するという訳です。

亜硝酸(毒性:中)

亜硝酸はアンモニアが分解された物質でアンモニアよりは毒性は低いですが蓄積されると魚やエビが体調を崩しやすくなり珪藻と呼ばれる茶色いコケが発生しやすくなり白カビや白濁の原因となることもあります。

亜硝酸は発生から通常2週間程度でろ過バクテリアによって、より毒性の低い硝酸塩に変化しますが既に生体が水槽内に居て危険な数値の場合は水換えによって除去します。

ちなみに理想的な亜硝酸濃度は0.8mg/L以下で1.6mg/L以上で生体にとって危険なレベルとなりますので数値は以下のキットで計測し必要に応じて水換えで除去します。


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硝酸塩(毒性:低)

硝酸塩は亜硝酸が更に分解され変化した物質で生体に対しての影響はアンモニアや亜硝酸に比べると低いです。

但し硝酸塩も毒性が低いとは言え蓄積されるにつれpHが下降し生体にも悪影響が出ると考えられています。

また硝酸塩は全てではないですが水草が吸収してくれますので、水草が茂っている水槽では余り問題になりにくいです。

硝酸塩を分解してくれるバクテリアは無いの?と疑問に思う方もいると思いますので一応触れておくと、あるにはあるのですが自然発生では定着する確率が低いので基本は無いという考えでいいかと思います。

ですので硝酸塩濃度を下げたい場合は水換えで除去することが基本です。


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水道水にも硝酸塩が含まれており地域によっては濃度が高い場合もあります。その場合は水換えで硝酸塩は排出出来ません。

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水質を計った時に硝酸塩だけが検出されそしてアンモニア、亜硝酸が検出されなかった場合はろ過サイクルがうまく働いているという一つの証明にもなります。

ちなみに、理想的な硝酸塩濃度は25mg/l以下と言われています。

ろ過サイクルが出来るまでの過程

水槽内の汚れはろ過バクテリアの働きによってアンモニア→亜硝酸→硝酸塩の順で毒性が低い物質に分解されることはわかったと思います。

ただし、そもそも最初のアンモニアが発生しないと、それを分解するろ過バクテリアは増殖しません。ですので意図的に水槽内にまずは、アンモニアを発生させる必要があります。

低床がソイルの場合

低床にソイルを使用した場合はソイルからアンモニアが溶出しますので、特にこちらが何もしなくても(苔対策のために水換えは行いますが)自然と硝化サイクルが時間の経過と共に出来てきます。

ちなみに溶出するアンモニアの量はソイルによって異なりますが、基本的に栄養が豊富なソイル程、アンモニアの量も高くなる傾向があります。

低床が砂や砂利の場合

砂や砂利は基本的に有機物を含まないので自然にアンモニアが発生がしません。

そのため、ろ過サイクルを作るために水槽内に意図的にアンモニアを発生させる必要があります。

最も一般的な方法はパイロットフィッシュと呼ばれる丈夫な魚を、先行的に入れることによってアンモニアを発生させる方法です。

代表的なパイロットフィッシュは以下のような魚達で、特にアカヒレはパイロットフィッシュの超定番種になります。

・アカヒレ
・ブラックネオンテトラ
・ラスボラエスペイ
・チェリーバブル
・メダカ

魚は入れる数の目安は1匹/10リットルで魚を入れたら通常通り餌をやり、アンモニアを発生させます。

アンモニアが0.25mg/Lを超えたら1/3水換えを行います。アンモニアの数値は日が経つにつれ低くなり二週間程度経つと亜硝酸が発生しますから今度は亜硝酸を測定します。

亜硝酸が1.6mg/L以上になったら、また1/3水変換えを行います。亜硝酸濃度も順調に行けば、低くくなっていき二週間程度経ったら硝酸塩の数値を計ってみましょう。

硝酸塩が検出されていれば、一応ろ過サイクルが出来ているということになります。

この方法は、あくまで一例で、この通りやらなければいけない決まりは、ありません。特に数値を、ここまで厳密に測る必要は、ないかもしれません。

メインの生体を入れるタイミング

確実なのは水質検査

メインの魚を入れる際の判断基準ですが、一番確実なのは水質検査を行い、各数値が適切であるかどうか確認して魚を入れていいか判断します。

水質検査は毎日やらなくても良いので例えば立ち上げから一ヶ月で一度計り、問題があれば水換えを1/3して、一週間後にまたするという感じで大丈夫です。アンモニアや亜硝酸は水換えを行えば一時的に下がりますが、ろ過サイクルが出来ていないと、また元の数値に戻ります。

逆に戻らなければ適切に水が浄化されている証明となるので数値に問題が無いことが確認出来ればいいです。前項でも触れていますが最終的には硝酸塩が検出されていれば、ろ過サイクルが働いている目安になります。

硝酸塩は水道水にも含まれますので『硝酸塩が検出された=ろ過サイクルが完成している』と言う図式は必ず成り立つ訳ではありません。硝化によって出たのか水道水に元々含まれているのかの判断は水道水の硝酸塩濃度を予め測定することが必要です。

理想的な数値
アンモニア 0.25mg/L未満
亜硝酸 0.8mg/L未満
硝酸塩 0.25mg/L未満

水草水槽の場合

水草水槽の場合は立ち上げから二ヶ月も経てば、(環境にもよりますが)水草がある程度繁茂している状態だと思います。

このような水草が繁茂している場合は水質を計らずとも、ろ過が正常に機能しているケースが多いです。

実際に私の経験上、水草がある程度全体的に茂っている水槽で各数値が危険な水準だったことは無いので、今では水草が繁茂したら水質検査はせずに生体を投入することもあります。

それで問題になったことは一度もありませんが、立ち上げ自体が初めてだったり、万全の状態で生体を入れたい場合は念のため、水質検査をしてみて下さい。

まとめ

長くなってしまったのでポイントをまとめたいと思います。

  • ろ過サイクルが出来ていないと水質が安定せず生体にとって危険
  • ろ過サイクルが出来るまでは1~2ヶ月程度必要
  • ソイルを使用すればろ過サイクルは自然に作られる
  • 砂や砂利系の低床はパイロットフィッシュを入れてアンモニアを発生させる
  • 生体を入れる前から水質検査を行っておくと確実
  • 硝酸塩が検出されればろ過サイクルが出来てる証拠 ※水道水の硝酸塩濃度にもよる
  • 水草が繁茂している状態であれば大抵の場合問題ない

今回は基本的な立ち上げや、ろ過にまつわる話が中心でしたが立ち上げ方法に絶対は無く、例えば硝酸塩が検出出来たからといって、とても安定している水質だと言い切ることは出来ません。

また数値だけでなく目視出来るコケの発生具合や水の透明度なんかも水質の数値と併せて見ておくと今後の立ち上げの経験値になると思います。

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