ここ数年のことですが水草水槽の立ち上げに「ミスト式」という方法が多くの人によって取られています。
そこで今回はミスト式の具体的な手順やメリットなどを紹介したいと思います。
ミスト式とは?
ミスト式とは水槽を立ち上げる際に、水槽を満水にせずに、まずは水上葉の状態で水草を繁茂させ、ある程度成長させたタイミングで水槽に注水するという方法です。
この立ち上げ方法を広めたのはタナカカツキ氏という有名なレイアウター(本職は漫画家)の方で、現在は多くのアクアリストがこの方法を採用しています。
タカナカツキ氏のブログ:http://seikasuisoubu.jugem.jp/?eid=443
ミスト式のメリット
ミスト式のメリットは色々あるのですが代表的なのは以下のようなことです。
立ち上げ初期の管理が楽
ソイルで立ち上げを行った際、水槽内が富栄養化するため、通常より多めの水換えを必要とします。
しかしミスト式で立ち上げた場合は水上葉が初期の養分を吸い取って生長するため、注水後の富栄養化をある程度、防ぐことが出来ます。
ですので通常の立ち上げよりも水換えは少なくすみ、またコケ発生のリスクも抑えることが出来ます。
要はトラブルが起きやすい立ち上げ初期を比較的、楽に乗り越えることが出来ます。
低床の傾斜を保つことが出来る
ソイルを角度をつけて盛った際、段々とソイルが雪崩れてしまうことが良くありますが、ミスト式で水草を繁茂させれば水草の根が土留めの役割を果たし、傾斜を維持することが出来ます。
傾斜を保つことは最終的なレイアウトの完成度に関わりますので、これも大きなメリットです。
水草の水中葉への移行がスムーズ
ミスト式で水草を根付かせることによって、水中葉への移行が楽に行えます。
水中に水草を鎮めると、水草にストレスがかかり、それで最悪、溶けてしまう場合もありますが、そのリスクを減らすことが出来ます。
モスの活着が楽
モスを石や流木に括り付ける際、通常は木綿糸やテグスを使用して仮止めしますが、ミスト式の場合は基本的には流木に乗せて放置するだけで活着します。
普段は付けづらい場所にも、モスを配置できるのでレイアウトの幅が広がります。
レイアウトの見直しが可能
水槽を立ち上げた後、石や流木の配置を変えたいなどレイアウトを調整したい場合、注水後だと低床が舞ってしまい難しい場合があります。
ミスト式だとそのような配置変えも比較的、楽に行えます。
ミスト式管理のデメリット
基本的にはメリットの方が多いミスト式ですが管理する上で、デメリットをまとめました。
藍藻が発生しやすい
藍藻とは根絶するのが難しい厄介なコケの一種です。
水の流れの無い場所に発生しやすいため、ミスト式だと悩まされることがあります。
藍藻を予防するためのポイントとして水位に注意して下さい。
水位を上げすぎると藍藻が、より発生しやすくなるので、水草がヒタヒタになる程度を目安としてして下さい。
つまり水草※特に前景草が完全に水中に沈んでしまうような状態は水を入れすぎとなります。
もし水を入れすぎてしまった場合は、フタを外して1~2日程度、乾燥させれば水位は下がります。
藍藻が発生してしまった場合の対策
藍藻が発生してしまったらオキシドールかグリーンFゴールドリキッドを希釈した液を霧吹きで散布すると有効です。
どのくらいの濃度でやったらいいのかはすみませんが私もはっきりとした基準を持っていないので各々で調整して頂けたらと思います。
高すぎる濃度の液ですと水草に影響が出ることも考えられますのでそこだけご注意下さい。
なおオキシドールは薬局で安価で購入出来ます。
カビが生える
密閉した状態なので、カビが生えることが良くあります。
特に流木を使用していると非常に発生しやすい環境となります。
水草に大量についてしまうと枯れてしまう場合もあります。
カビ対策
- 流木や石などのレイアウト素材は良く洗う
- 組織培養された水草は寒天部分を良く洗い流す
- 一日に一回、蓋を外し換気する
要はカビの原因となるものを持ち込まないことと、時折、新鮮な空気に触れさすことが大事です。
また、以下のようなカビを抑えることが出来るスプレーを使用することも有効になります。
ミスト式の立ち上げ方
実際に私がミスト式で立ち上げた時の画像と共に、手順等を紹介したいと思います。
1.水上葉を植栽
この時に立ち上げたのは30キューブ水槽で流木を林立させたレイアウトにしました。
使用した水草は、前景草はニューラージパールグラスで、後景はパールグラス、ポイントでハイグロフィラ・ピンナティフィダを植栽しました。
水草は全て水上葉を購入し少しソイルがヒタヒタになる位まで注水し植栽を行いました。
余り水位を上げすぎると藍藻が発生するので、気持ち少な目くらいの方が良いと思います。
2.蓋をして湿度を保つ
植栽が完了したら蓋をします。蓋はラップでもガラス蓋でもアクリル蓋でも密封出来れば何でも大丈夫です。
ガラス面に結露が出来るくらい湿度が保てていれば大丈夫だと思います。
後はライトのタイマーをセットし水上栽培します。
ライトは最初から長時間でも大丈夫なので8~10時間程度をオススメします。
3.水草がある程度育ったら注水する
ミスト管理開始後、6週間経過しました。
前景草のニューラージパールグラスが8割くらい低床を覆ったので注水することにしました。
ミスト式の注水タイミングはこのようにある程度、水上葉が茂ったら行います。
余り長すぎると、藍藻やカビの発生リスクが高くなるので、期間としては1~2ヶ月くらいが目安です。
4.注水後は通常の管理
注水したらフィルター、ヒーターなどの各種器具を設置し通常管理します。ちなみに注水後、流木が安定しなかったので一部を差し替えています。
水換えに関してですが大量換水までは必要ないですが、様子を見つつ少しは行った方が良いと思います。
全くしないとコケ発生リスクが高まります。
この水槽の現在の様子です。ミスト式開始から3ヶ月程度経過しています。注水後に流木が倒れたり、ヒゲコケが生えたりと色々とトラブルがあり水草の生長がちょっとイマイチでした。
後景のパールグラスは、まぁまぁ順調に育ちましたが、ピンナティフィダは残念ながら溶けてしまいました。
この水槽は少し特殊なコンセプト(CO2とフィルター無しでエアレーションのみで運用)で立ち上げたので、大成功とまではいきませんでしたが、ある程度は満足しています。
ミスト式で成功させるためのポイント
温度は 20℃ ~27 ℃ 程度が理想
水中より育成は容易ですが、最低限の温度管理は必要です。
簡単に言えば暑すぎても寒すぎても駄目ということになります。
なので、出来れば真冬と真夏は避けた時期に立ち上げするのがオススメです。
冬はパネルヒーターがあれば、底を温めることが出来ますので、寒い時期に立ち上げる際はパネルヒーターを活用して下さい。
ソイル以外でミスト式を行うメリットは、ほとんど無いのでソイルをオススメします。
水草は水上葉を植える
ミスト式で立ち上げる場合、基本的には水上葉の水草を植えることをオススメします。
水中葉でも、無理ではないのですが『一旦、枯れる→水上葉に生え変わる』という過程が必要になるので、その分、少し時間がかかります。
時間がかかる程、藍藻やカビの発生率も高くなってしまうリスクがあるので、やはり最初から水上葉を植えた方が無難ではあります。
期間は1~2カ月程度が目安
絶対的な決まりは無いですがミスト式の期間としては 水草が根付いて、ある程度茂った状態が目安となります。
必ずしも完璧に水草が水槽内を覆い尽くすまで行う必要はありません。
余りに長期間行うと藍藻等の発生リスクも増えますので、程々にしておくのも大事なことです。
ミスト式が終わったあとの水換えについて
ミスト式終了後の水換えですが、ある程度、余分な養分は消費されてるものの全く水換えしないとコケが発生するリスクは普通にあります。
ですので最初の一週間は2~3回、1/2~1/3程度水換えすることをオススメします。
魚を入れるタイミング
注水と同時に魚を入れる人もいるようですが個人的には水中葉がある程度、繁茂してからの方がより安全だと思います。
大体、2~4週間が目安です。
ミスト式に向いている水草 向かない水草
ミスト式に向く水草、向かない水草を考えたいと思います。
ミスト式に向く水草
背が低く低床を覆うように育つ水草、前景草全般はミスト式向きの水草と言えます。
例:ニューラージパールグラス・キューバパールグラス・ショートヘアーグラスなど
また、ウィローモスなど活着する性質を持つ水草もミスト式に適しています。
ミスト式に向かない水草
基本的に水中葉の水草を、わざわざミスト式に利用するメリットは薄いと言えます。
また、水草の中には水上化しない水草もあるので、それらはミスト式には使えません。
例:カボンバ・マツモ・アナカリス・バリスネリアなど
ミスト式に向いてるレイアウト
ミスト式に向いているレイアウトは、上の画像のような単一の前景草を敷き詰めたシンプルなレイアウトではないでしょうか。
ミスト式が上手くいけばレイアウトも成功したようなものですからね。
また盛り土をして傾斜をつけたレイアウトにしたい場合もミスト式が向いてると思います。
まとめ:立ち上げに苦労している人にすすめたいミスト式
通常の立ち上げ方で水換えやコケの対処に苦労している人は、是非ミスト式で立ち上げることをオススメします。
上で挙げたようなメリットを感じられる筈です。
また少ない水草を水上で増やしてから注水するので、大量の水草を用意する必要が無いことからローコストで水草水槽を立ち上げしたい方にもオススメです。