サイアミーズ・フライングフォックスはコケ取り生体として、とても有名な熱帯魚で特に他の生体が食べない黒ヒゲコケを食べることから重宝されています。
しかし、この魚は少し飼い方に注意するポイントが幾つかありますので、それらをなるべく簡潔にまとめたいと思います。
成魚の最大体長は10cmを超える
特に90cm以上の大型水槽で長期間飼育(寿命も10年と長いです)していると、大きさが10cm以上の個体になることもあります。
大型化すると、どのようなデメリットがあるかと言うと
- 存在感が大きすぎる
- 小さいエビが食べられやすくなる
- 縄張り意識が強くなり他の魚を追い回すことがある
以上のようなことが、あげられます。
ただし、まず販売されているサイアミーズ・フライングフォックスは3~4cmの小さめサイズの場合がほとんどです。
また、60㎝以下の小型水槽で育成している限り、そこまで大型化するケースは少ないでしょう。
主な死因:飛び出しについて
サイアミーズ・フライングフォックスは水槽内を高速で縦横無尽に泳ぎます。
そのことからも想像出来るようにジャンプ力も強く、水槽外へ飛び出してしまうことも少なくありません。
ですので基本的にはフタをするか水位をある程度下げて飼育することを推奨します。
同種間やエビとの混泳について
サイアミーズ・フライングフォックスは水槽内を勢い良く泳ぎ回るものの、小さい頃は問題を起こすことはまず無いです。
しかし大型化するに従って縄張り意識が高くなり同種間の争いも、やや強くなる傾向があります。
また同種で無くても遊泳域が被っている魚も同様に追い払うこともあり、こちらもやはり成長するに従いその傾向は強くなります。
また前述したように大型化するとミナミヌマエビ等の小型エビは食べられてしまうこともあるので注意が必要です。
コケ取り生体としてサイアミーズ・フライングフォックスとヌマエビ達を一緒に入れる場合も多いと思いますが、体格差がある場合は一緒にしない方が無難です。
黒ヒゲコケだけを食べるわけではない
サイアミーズ・フライングフォックスは茶ゴケ、緑藻、アオミドロ等、他の種類のコケについても貪欲に食べます。
つまり他のコケもある時はそちらを優先して食べることもあり黒ヒゲコケまで辿りつかないこともあります。
ですので黒ヒゲコケ以外はヤマトヌマエビやオトシンに処理して貰い残った黒ヒゲコケをサイアミーズ・フライングフォックスに除去して貰うという方法が良さそうです。
偽者が混じって売っている?
CC by-sa Mirko Hartig https://en.wikipedia.org/wiki/Flying_fox_(fish)
特に良くネット上で言及されるのがフライングフォックスという外見が似た種の熱帯魚です。
見た目の違いはサイアミーズ・フライングフォックスは尾の最後まで黒いラインが入りヒレは色が入らないことから判別は難しくは無いです。
昔はこのフライングフォックスがサイアミーズ・フライングフォックスとして売られていたケースもあったようです。
ちなみにフライングフォックスはサイアミーズ・フライングフォックスより更に大型化しコケ取り能力も高くありません。
しかし今回、何店舗かのアクアリウムショップに確認したところ現在は問屋がコケ取り用のサイアミーズ・フライングフォックスのみしか取り扱っていない場合が多いのではないかとのこと。
ということで、このフライングフォックスがサイアミーズ・フライングフォックスとしてショップで混じって売られることはまず無いんじゃないかと考えられます。
コケ取り能力の個体差について
私も4~5回は飼育したことがありますが確かにコケ取り能力には個体差が出ます。
ネット上でもそのような意見は少なくありません。
例えばヤマトヌマエビでもコケを余り食べない個体というのはいますから純粋にそういった個体差があるのかもしれません。
他の理由としてサイアミーズ・フライングフォックスはクロッソケイルス属というコイ科の中の一つのグループに分類されます。
クロッソケイルス属には10以上の種が属していますが、そのどれもが外見がサイアミーズ・フライングフォックスに酷似しておりそもそもサイアミーズ・フライングフォックスと呼ばれる種が正確にはどの種を指すのか定かではないというのが現状のようです。※私が調べた限りですが
つまりサイアミーズ・フライングフォックスとして飼育をしていても実は近縁種である可能性も否定できず、それがコケ取り能力の個体差に繋がっているのではないかと推測されます。
今の時点ではこれを回避する手段は無く、サイアミーズ・フライングフォックスとして売られているものを購入するしか無いと思いますが、このような可能性も考えられるので一応この記事でも触れさせて頂きました。
餌について
サイアミーズ・フライングフォックスは雑食性の食欲旺盛な魚なのでコケ以外にも人工飼料も積極的に食べます。
そうなると本来の導入目的であるコケ取りに支障が出る場合があるのですが、そのような時はなるべく水面に浮かぶ餌を選ぶといいです。
サイアミーズ・フライングフォックスの口は先端より少し下についているので水面に浮かんでいる餌を食べるのは少し苦手だからです。
なのでフレークタイプの餌の方がサイアミーズ・フライングフォックスだけに食べられてしまうことを、ある程度避けることが出来ます。
水槽に何匹入れるのが適正か
個人的意見ですが入れすぎると後悔する魚です。
30cm水槽で1匹、60cm水槽で1~3匹、90cm水槽で3~5匹程度が妥当だと感じます。
最終的にもっと増やすとしても最初は少な目からスタートすることをオススメします。
水草の食害について
サイアミーズ・フライングフォックスはそこまで水草を食べることはないですが他に食べるものが無い時は(ウィローモス等の)モス系の新芽が食べられることがままあります。
コケが全く無いような水槽ではこの傾向が強くなる可能性が考えられます。
まとめ
サイアミーズ・フライングフォックスは黒ヒゲコケを食べてくれる貴重な種ですが上記で紹介したような少々癖のある魚です。
そして黒ヒゲコケを必ず食べてくれる保証はありません。
その辺は固体差の運にもよりますが、人によって評価が分かれる魚かとは思います。
更に黒ヒゲコケは工夫すればサイアミーズ・フライングフォックスに頼らなくても除去出来る方法もあります。
ということでサイアミーズ・フライングフォックスは黒ヒゲコケに悩んでいても少し考えてから導入することをオススメします。