エンゼルフィッシュは熱帯魚の代名詞と言ってもいい位、非常に人気な魚です。
それ故、ほとんどのアクアリウムショップにエンゼルフィッシュは売られており、その独特で優雅なフォルムに惹かれた方も多いのではないのでしょうか。
しかしエンゼルフィッシュは飼育に関して、いくつか注意しなければいけない点があります。
今回はその辺りの注意点を踏まえ、エンゼルフィッシュの基本的な飼育方法を紹介します。
エンゼルフィッシュはどんな魚?
エンゼルフィッシュは南アメリカやアマゾン川原産の淡水魚で、細かく言うとスズキ目ベラ亜目シクリッド科に属する熱帯魚です。
名前の由来は大きなヒレを揺らしながら優雅に泳ぐその姿が、天使に例えられたもので冒頭でも触れましたが大変人気がある魚です。
改良品種も盛んな種で、ヨーロッパや日本国内でもブリードが行われており、様々な模様や色のバリエーションのエンゼルフィッシュが流通しています。
エンゼルフィッシュの基本的な飼い方
水温
熱帯魚ですので26℃前後で飼育します。
寒い時期はヒーターが必須ですが、比較的、高水温には強いので種によっては30℃を少し上回っても大丈夫だったりします。
ですが基本的に30℃以下を保つようにした方が安心して飼育できるでしょう。
水質
エンゼルフィッシュは現地の水質が弱酸性~中性であることから基本的に弱酸性~中性の間で飼育していれば問題ありません。
ただ基本的に丈夫な種でもあるので、弱アルカリ性程度であればほとんどの種は適応出来るとは思います。
改良品種の中でも丈夫な種とそうでない種もいます。特にブラック系、レース系は水質に若干敏感な面があるので理想である弱酸性~中性で飼育することをオススメします。
餌
結論から書くとエンゼル用の人工飼料が一番オススメです。
エンゼルは生きた動物性の餌、いわゆる生餌を最も好んで食べますが人工飼料でも全く問題無く育ちますし食いつきます。
赤虫や糸ミミズのような生き餌は、確かに高たんぱくで特に成長期にそれらの動物性の餌を与えると成長率が高くなるというメリットもありますが、保存性や手軽さ、栄養の偏り、水を汚す等のデメリットも目立ちます。
ですので、やはり手軽に与えることができ栄養バランスにも優れた人工飼料を中心に与え、生き餌等は与えるとしても補助的に使う方法をオススメします。
飼育する水槽サイズ
エンゼルフィッシュは個体差はあるものの基本的に成魚は平均で10~13cm程度になります。
中には15cm以上の個体になる場合もありますし画像でもわかるように非常に体高がある魚です。
ですから売っている時は数cm程度の小さいサイズでも、一年も経過すれば成魚並のサイズになることを予め知っておく必要があります。
水槽サイズについては(平均サイズを目安にすると)最低でも60cm、できれば90cm以上の水槽で飼育をオススメします。
また高さについても出来れば45cm以上高さがある水槽で飼育するのが理想的です。
これだけ大きい水槽サイズを推奨するのは理由があります。エンゼルフィッシュは過密であればある程お互いのテリトリーを主張するようになり同種間でケンカをします。
その際にエンゼルフィッシュの大事なヒレに傷がついてしまうことがあるので、綺麗に育てたいのであれば余裕を持った水槽サイズで飼育することが大事になってくるのです。
寿命について
エンゼルフィッシュの寿命については個体や環境によって大分、幅がありますが一般的な小型熱帯魚よりは長く生きられます。
適切な飼育環境であれば5年以上は生きられるという声が多いです。長ければ7~8年、中には10年以上飼育しているという方もいますので、長い間付き合える熱帯魚という認識で良いと思います。
エンゼルフィッシュは丈夫か?
エンゼルフィッシュは度々、初心者向けであると紹介している書籍等も少なくありません。
その理由は丈夫であるという点が大きいためと思われます。エンゼルフィッシュはアルタムエンゼルなど一部の種を除いて、基本的には水温や水質にもうるさくない丈夫な熱帯魚だと言えます。(※導入時には注意する必要があります)
但し初心者向けであるかと言うと、個人的には一概にそうは言えないと思います。
ある程度の水槽サイズが必要なことや後述する混泳について注意しなければいけないからです。
エンゼルフィッシュを購入する際に注意するポイント
丈夫と言われる本種ですが購入する時は慎重になってよく個体を観察する必要があります。
輸入か国産ブリードか
まずエンゼルフィッシュは大きく分けて三つのタイプが販売されています。
一つは東南アジアやヨーロッパでブリードされ輸入したもの、もう一つは日本国内で養殖された国産ブリード、基本的にはこの二タイプがお店で売られるエンゼルフィッシュのほとんどを占めます。
最後にブラジルやペルー等の現地の川で採集された、所謂ワイルドもの。流通はブリードに比べれば少ないですが、お店によっては、こちらもたまに売っています。
この中で初心者にオススメするのは国産ブリードです。
やはり長い時間をかけ輸入された個体は、ストレスで弱っている確率が国産ブリードよりは高く、特にエンゼル病と呼ばれる不治の病に感染していることが稀にあります。
エンゼル病は一度感染してしまうと、完治することは無く死んでしまうという恐ろしい病気です。
なおかつ感染力も強く同じ水槽内にいる健康なエンゼルフィッシュに混ぜてしまうと、たちまち水槽全体に感染が広がってしまいます。
このようなリスクを避けるため、多少値段は高くなるものの特に初心者の方には国産ブリードをオススメします。
元気な個体であるか判断
これはエンゼルフィッシュに限った話ではないですが、魚を購入する際は元気な個体を購入しましょう。
具体的には以下のようなことに注意して観察してみて下さい。
- 水槽内の魚がみんな元気良く泳いでいるか
- 体の表面に白い斑点(白点病)が出ていないか
- ヒレがボロボロになってないか
- 体に出血している部分がないか
- 背骨が曲がっていないか
また、その水槽だけではなくて出来れば全体的に管理が行き届いているショップかどうかも、併せて判断するといいと思います。
中にはトリートメントをしないで売っている、死んだ個体をそのままにしている、白点病が出ている魚をそのまま売っているショップも残念ながら存在します。
後々、後悔しないためにも値段だけに囚われず、しっかり観察してから判断しましょう。
エンゼルフィッシュの混泳について
エンゼルフィッシュは獰猛な傾向があるシクリッド科の魚ですので、混泳に関しても幾つか気を付けないといけないポイントがあります。
エンゼルフィッシュ同士の混泳について
エンゼルフィッシュは同種間でもあっても特に個体間にサイズ差がある場合、大きい個体が小さい個体をいじめることがあります。
またペアで飼う場合、そのペアの相性が悪いと弱いほうがいじめられるケースもあります。
そのようなことを踏まえるとエンゼルフィッシュは、同程度のサイズで3匹以上で飼育すると問題が起きにくくなります。
また成魚になるにつれ縄張り意識が強くなる傾向があるので、過密飼育することもトラブル発生に繋がります。つまり過密すぎても駄目。
繰り返しにはなりますが、余裕を持った水槽サイズで適当な数を飼育するのが理想ではないでしょうか。
他魚との混泳について
10cm以上の個体になると口に入るものは何でも食べてしまうので、2cm以下の小型熱帯魚は一緒に飼うことが出来ません。
逆にエンゼルフィッシュが傷つけられる代表的な魚は以下のような魚達です。
- スマトラ
- 中型以上のカラシン
- 大型になるプレコ(セルフィンプレコなど)
要はエンゼルフィッシュに食べられないサイズ3~7cm程度の魚かつ温和な性格の魚が向いています。
例をあげると以下のような魚達です。
- 大き目のカージナルテトラ
- コリドラス
- ローチ
- ソードテール
- ドワーフ・グラミー
- グッピーやプラティ
この辺りならサイズにもよりますが、特に問題は起きずらい組み合わせだと思います。
但し最後に挙げたグッピーやプラティは、繁殖を行いたい場合は稚魚が食べられてしまうので、そのような場合は避けて下さい。
エビとの混泳について
まずエンゼルフィッシュが成魚サイズの場合、ミナミヌマエビは食べられてしまう可能性が高いです。
同程度のサイズであるチェリーシュリンプ等にも同じことが言えます。
それでも水槽内のコケ取りのためにエビを入れたいという方もいるかと思います。
やはりその時はヤマトヌマエビなら(サイズにもよりますが)食べられる確率は低いです。
但し捕食されることは無くてもエンゼルフィッシュに怯え、隠れてしまいコケを食べることが少なくなってしまうことが見受けられます。
ここら辺は個体差もあり難しいところですが混泳させてみないとわからない部分なので参考までに。
エンゼルフィッシュの繁殖について
エンゼルフィッシュは養殖が盛んなことからもわかるように繁殖が容易な種です。
ですので繁殖についても流れを簡単に説明したいと思います。
まず複数匹のエンゼルフィッシュを水槽内に入れると自然と中の良いペアが出てきます。
ペアは繁殖期に入るとオスがメスを追うような仕草が見られるので観察していればすぐにわかると思います。
もし確実に繁殖をさせたいのであればこの時点でペアを別水槽に移します。
産卵用水槽は60×30×36cm程度の余裕を持ったサイズが理想で低床は何も敷かないベアタンク、フィルターは卵を吸い込まないようにスポンジフィルターを使用するのが一般的です。
また産卵水槽では卵を産みつける場所用に流木や葉の面積が広いアマゾンソードやアヌビアスナナなどがあるといいでしょう。
産卵が成功したら一週間程で稚魚が泳げるまでに成長し、この期間は特に人間が手を加えてあげる必要はありません。
親の周りで稚魚が回遊するのを確認出来るようになったら稚魚用の餌を準備します。
一番いいのは沸かしたてのブラインシュリンプですが用意が出来ない場合は稚魚用の人工飼料で代用出来る場合もあります。
また餓死を予防するため一日に二回は餌やりを行うことを推奨します。
稚魚は成長も早いので、生後一ヶ月もたつとエンゼルらしいフォルムが見受けられ、親魚と同じような感覚で育てていきます。
以上かなり簡潔ではありますが、エンゼルフィッシュ繁殖の一連の流れについてでした。
初心者向けのエンゼルフィッシュは?
エンゼルフィッシュは冒頭でも述べたように、改良品種が盛んなので全ての品種は100種を超えると言われています。
但し実際にショップで売られているエンゼルフィッシュは、一般的な種が数種類というのがほとんどだと思います。
品種の中でも丈夫な種とそうで無い種がいますので、初心者向けな丈夫な種を3種紹介したいと思います。
並エンゼル
エンゼルフィッシュの原種である三種のうちの一種のスカラレ・エンゼルを養殖化したエンゼルを日本では並エンゼルと呼びます。
他の魚でも見られることですが原種に近い程、丈夫である傾向がありますので並エンゼルが丈夫であることは納得です。
ゴールデンエンゼル
元々はアメリカで生み出された品種と言われていますが現在では東南アジア、そして日本でもブリードが行われているポピュラーな品種です。
こちらも並エンゼル同様、飼育が容易とされる品種の一つです。
マーブルエンゼル
マーブルエンゼルもポピュラーな品種で名前の通り、体全体にマーブル模様が入ります。
このマーブルエンゼルはゴールドタイプやダイヤモンドタイプも存在します。
水草水槽とエンゼルフィッシュの相性
エンゼルフィッシュ自体は水草と相性がいいというか入れた方がいいです。ケンカした場合の隠れ場になる他、繁殖させる場合には産み付け場所となるので何らかの水草を入れておくのが基本です。この項では水草中心の水槽にエンゼルフィッシュを泳がせた場合に問題となることについて書いています。
水草水槽にエンゼルフィッシュを泳がせたいという方も多いと思いますので、そのことについても考えてみたいと思います。
水草レイアウトコンテストの出品作品を見てみるとエンゼルフィッシュが主役となっている作品も少なくありません。
但しその多くは一匹もしくは数匹の場合がほとんどです。
前述したようにエンゼルフィッシュはエビを食べてしまうので、もし入れるとすればヤマトヌマエビになると思います。
しかしヤマトヌマエビの活動もエンゼルフィッシュによって鈍るので思うようにコケを食べてくれない場合があります。
じゃあオトシンはどうかというとオトシンもサイズによっては食べられてしまう可能性があり、またオトシンをエビのように大量に入れることは美観的にどうなのか、という問題もあります。
本格的な水草水槽ですとヤマトヌマエビ無しでコケを抑制するのはハードルが高いので、その辺りが水草水槽にエンゼルフィッシュを泳がせることが難しい理由だと思います。
このような理由から水草レイアウト水槽ではエンゼルフィッシュを一匹だけ入れる方が多いです。これであれば問題が起きにくく水槽も維持しやすいと考えられます。
まとめ
エンゼルフィッシュの基本的な飼育方法をまとめましたが気を付けたいポイントとしてはまずは状態の良い個体を購入することでエンゼル病を持ちこまないこと。
もう一つは混泳についてでエンゼルフィッシュが成魚になるサイズを考え、エンゼルが食べないサイズかつエンゼルに攻撃しない魚を選ぶことが、混泳のコツと言えます。
この二つを抑えあとは水槽サイズに余裕を持たせれば、エンゼルフィッシュの魅力を楽しめる飼育環境を作れるのではないかと思います。
他の熱帯魚には無い独特の華麗さを備えた熱帯魚なので是非飼育にチャレンジしてみて下さい。