アクアリウムを語る上で外せないのが水草です。その名前の通り水中で育成する植物ですが、近年では水草の魅力にはまる人が増加していて、水槽の中に水草を入れることが半ば当たり前になってきました。
特に水草を水槽内いっぱいに茂らせた水槽を「水草水槽」と呼びますが綺麗な水草水槽は多くの人を魅了し、その美しさを競う水草レイアウトコンテストも毎年開催されています。
今回は水草の基本的な知識や、育成に必要な栄養など水草の概要について簡単に説明したいと思います。
水草とは
水草とはその名の通り水中で生活する植物になります。
起源としては元々海から藻類が陸上に上がり、再度水中に進出したものが現在の水草の姿と言われており、ちなみに世界中に水草は自生していますが日本にも自生する水草は200種程度あるとされています。
陸上の観葉植物は基本水中では育成が出来ませんが、水草は水陸両方で育成できる種類も多くあります。また観葉植物と外見の違いですが水草は水中で柔らかく繊細な印象を与え、状態がいいと気泡をつける姿も鑑賞性が非常に高いと言われています。
水草のタイプ
水草は主に4つのタイプに分けられます。
- 沈水性タイプ:草全体が水中につかった状態で生息
- 浮遊性タイプ:低床に根を張らず水面や水中を漂う(浮き草など)
- 浮葉性タイプ:低床から茎を伸ばし水面に葉を浮かせる(スイレンなど)
- 抽水性タイプ:根は低床に埋まり茎と葉は水上に出ている
水草の形状の違い
水草は種類によって形が細かく異なりますが主に二つのタイプに分けられます。
有茎種
草の中心に直立した茎を持った水草の総称です。茎の節から葉を伸ばし水面方向に向かって成長します。代表種としてアンブリアやカボンバ、リスノシッポなどがあります。
ロゼット種
根から直接葉が出ているように見える水草の総称です。根出葉とも呼ばれ、簡単に言うと根元近くに葉がついていて株の中心から放射状に葉を出すイメージです。代表種としてクリプトコリネやエキノドルス、アマゾンソードなどがあります。
水上葉と水中葉の違い
水草は水中のみで生息する植物ではなく、水の中と外にいる場合で姿を分けることによって、どちらでも生息出来る種類が多くあります。
それぞれ水中葉(すいちゅうよう)、水上葉(すいじょうよう)と呼び、お店でもそれぞれ分けられて販売されています。生産コストが水上葉の方が安いため値段も水上葉の方が安いですが他にどのような特徴があるか解説します。
下の画像はグリーンロタラで左が水上葉、右が水中葉となっています。
水上葉の特徴
水上で生息する為、陸上の植物と同じような、どことなく硬そうなイメージを受けると思います。
その分、水中葉よりは丈夫で輸送中に溶けてしまうというようなトラブルが少ないことが特徴です。また水中葉より害虫を水槽内に持ち込みにくいというメリットもあります。
もちろん鉢に植えて水上で管理して増やすことも容易です。また水上葉を水中に入れると数日から1週間程度で水中葉に移行します。水上葉から水中葉に移行する途中、見た目的には枯れるように見える場合(クリプトコリネなど)がありますが勘違いして捨てないようにして下さい。
水中葉の特徴
水上葉に比べ柔らかく繊細な印象を受けると思います。水草と言えば通常は水中葉を指しますので水草の種類を覚える際は水中葉の姿で記憶しておく方がいいでしょう。
水槽内にそのままの姿で入れることが出来るのでレイアウトをイメージしやすいですが、貝の卵など害虫を持ち込んでしまうデメリットがあります。
購入する前に水上葉か水中葉か確認する
注意しなくてはいけないのが水上葉と水中葉で草の姿が全然違ってくる種類もある為、買ってみて水槽に入れ育ててみたらイメージと違ったみたいなことにならない為にも店員さんにその水草がどちらなのか確認しておくといいでしょう。
水上葉と水中葉どちらを購入した方がいいのか
両方売られている場合どちらを買った方がいいのか筆者も迷う時があります。
ここからは個人的見解になるのですが基本的には状態が良ければ水中葉で買う方が良いと思います。というのも水上葉から水中葉に移行する段階で手間取ってしまうことがあり最悪、水中葉に移行する前に枯れてしまうリスクがあるからです。
背の低い前景草を購入する場合は(そもそも水上葉の状態で売られてるケースが多いのですが)水上葉の方が展開が早い気がするので特に気にすることなく水上葉を購入しています。
水草の育成に必要な条件とは?
陸上の植物と同じように水草にも成長する為の条件があります。この基本ポイントを大きく外してしまうと水草の育成が極端に難しくなりますので是非、抑えておいて下さい。
- 光+二酸化炭素+養分+水+温度
光
水草は光合成をすることによって成長しますので水草に光は必須条件となります。アクアリウムでは水槽用ライトを使用し決まった時間に点灯させ一定時間照射します。ちなみにある程度の光量があれば二酸化炭素を添加しなくても育成出来る水草は沢山あります。また光の管理の基本ポイントは以下のようになります。
- 太陽光は水槽内に入れずに管理する
- 水槽用ライトの照射時間は6~8時間程度
水草の育成に必要な光量
水槽サイズ | 水量 | ルーメン |
20×20×20cm | 7L | 400lm以上 |
30×30×30cm | 25L | 1000lm以上 |
45×27×30cm | 34L | 2000lm以上 |
60×30×36cm | 60L | 3000lm以上 |
90×45×45cm | 166L | 6000lm以上 |
120×45×45cm | 219L | 8000lm以上 |
この表を参考にする際の注意点や補足
この表はCO2添加を前提としほとんどの陽性水草を育てるのに必要な光量を示しています。
ですので例えばCO2添加をしない場合はこの数値より低くても問題なく、また陰性メインの水草水槽の場合や水草を育てない場合はこの光量の半分程度を目安にして下さい。
この数値は目安であり絶対にこれ以上のルーメンではないと育たないということではありません。あくまで十分な光量という意味合いで作成しましたのでこれより低い光量の照明でも水草を元気に育成している報告は多数あります。
この数値の根拠ですが十分な光量を確保されていると言われている照明のルーメン値を参考に作成しました。例えば30~60cm水槽では後に紹介するADAアクアスカイ、90cmではテクニカLEDライトなど、そのライト一つで水草が十分に育つと評判の機種のルーメン数を参照しています。
二酸化炭素(CO2)
水草は光合成の際に二酸化炭素を消費し酸素を排出します。この二酸化炭素は水草の育成に多大な影響を与え基本的にはどんな水草も二酸化炭素を添加した方が成長スピードが速く綺麗に育ちます。また中には二酸化炭素を添加しないと、どうしても育てらない種類もあります。
このように水草を綺麗に育てたいなら二酸化炭素の添加は必須と言えます。ただし二酸化炭素の添加が無くても育成自体は可能な種類も沢山あるので初心者やそこまで設備投資をかけたくない人はそういった育てやすい水草を選べばいいと思います。
養分(肥料)
水草は植物なので栄養素が無ければ育成出来ることが出来ません。水草が必要とする栄養素はまず「窒素・リン・カリウム」で、これらは三大栄養素や多量元素と呼ばれます。他に要求量は少ないものの「カルシウム・鉄・マグネシウム・硫黄」などを必要としこれらは微量元素と呼ばれます。
養分は「餌の食べ残し・魚の糞・水草の枯れ葉・水道水」などで自然発生し水草に供給されます。ただし自然発生する養分だけですと水草の要求量に足りないケースが多いので意図的に管理側が肥料を追加することになります。ソイルには予め養分が含まれていますが、それ以外にも低床に埋める固形肥料や水槽に直接溶かす液体肥料の2タイプがあります。
肥料についての細かい話はこちらの記事で紹介しています。
水
水草も植物ですので水も育成のために必ず必要な要素です。日本の水道水は中性~弱アルカリ性の水質の地域が多いですが水草の多くは弱酸性の水質を好みますので、水草水槽ではそのような水質に調整することが多いです。低床(砂)にソイルを使用すれば水質を酸性に傾けてくれますので水草水槽のソイル使用率が高いのはそのためです。
温度
水草にも適正水温があり20~28度程度の範囲で育成します。そのため冬場はヒーターで保温し夏はファンやクーラーで水温を維持するようにします。
水草が光合成することによる生態系への好影響
水槽内に水草を植えていると水が綺麗になるということを聞いたことがある初心者の方もいるかもしれません。
それは水草が水槽内の魚達の糞などが元になった水中の養分を光と水を利用し今度は光合成をすることによって魚達や土壌バクテリアが必要とする酸素を供給します。このように水草は小さな生体系を作ることに重要な役割を担っているのです。
水草を植えるメリット
水草は植えるだけでも自然感が出て水槽を美しくしてくれ私達を癒してくれますが見た目以外にも色々なメリットがあります。
- 魚達の隠れ家になりストレスを緩和させケンカの予防になる
- 魚が繁殖する際に卵を産みつける場所になる
- 水槽内の硝酸塩など生体に有害なものを吸収する
- 水草は生長が早く数日で変化が表れるので楽しい
水草を植えるデメリット
デメリットとまではいかないまでも水草を管理するにはちょっとした手間とお金が必要です。
- 水草に付着した貝やコケが持ち込まれることがある
- 定期的なトリミング(カットし長さを調整すること)が必要
- 枯れていると癒しとは程遠いみすぼらしい姿に
- 水草の入れ替えやco2添加などのコストがかかる
【まとめ】始めたらわかる水草の魅力
筆者もアクアリウムを始める前は魚には興味があっても水草にそこまで興味は無かったのですが始めてみたら水草の魅力にどんどんのめり込んでいき熱帯魚と同じくらい水草に興味を持つようになりました。
アクアリウムは水中ガーデニングとも言わることがありますが陸上の植物より生長が早く日々変化があるので観察が本当に楽しいです。まだ水草を水槽内に入れたことがない人も是非一度水草の美しさに触れてみてグリーンの癒しを感じて欲しいと思います。