
ベタはどこのアクアショップでも売られている定番の人気熱帯魚で丈夫で、初心者向けとも言われます。
しかし、実際にはベタは通常の熱帯魚飼育とは大きく異なるポイントがいくつかあり、それを知らないと飼育に失敗します。
今回は具体的に抑えておきたい重要ポイントについて解説したいと思います。
ベタってどんな魚?
ベタはタイ原種の熱帯魚で水たまりのような水の流れの少ない沼や池に生息しています。
また改良品種が盛んに行われている魚で、長いヒレと派手な色彩を持つ鑑賞性の高いベタが並べられています。
ベタは闘魚とも呼ばれオス同士はどちらか死ぬまで激しい喧嘩をし、その争いの勝敗がタイでは賭けの対象となっていた歴史があります。
ですのでオス同士は一緒の水槽では飼うことが出来ません。
またラビリンス器官と呼ばれる特殊なエラを持ち、空気中の酸素を取り込むことが出来ることから酸欠に強い魚です。
なので、エアレーション無しの小さい容器で飼うことが出来る丈夫で綺麗な初心者向きの熱帯魚とも言われます。
ベタの種類
改良品種が盛んな本種ですが大まかにベタのタイプを分けると以下の5種類がベースになります。
トラディショナルベタ

一般的にベタと言われれば、この種を指すベタの最も一般的な種で濃い目の赤や青など鮮烈な一色に染まったシンプルに美しいベタです。
定番種なので価格も安く初めてのベタ飼育にもオススメな種でもあります。
クラウンテール

トラディショナルベタのヒレが裂けたような切れ込みが入った種です。
ヒレの切れ込み方でグレードが変わり深く切れ込みが入った魚ほど評価が高い傾向があります。
スーパーデルタテール、ハーフムーンテール

トラディショナルベタより更にヒレを大きく、そして模様も美しく改良された「ショーベタ」とも言われる種類でベタ愛好家達によって品評会も時折行われる大変美しい種です。
尾の開き具合によってデルタテール→スーパーデルタ→ハーフムーンクラスと言うようにクラス分けされています。
プラカット

原種に近い短いヒレを持つベタです。
以前は闘魚用として改良されていましたが、最近だと鑑賞性に優れた種も世に出回り上の画像の鯉のような模様を持つ「コイベタ」が人気を博しています。
カラーバリエーションも非常に豊富で好みの色を選ぶ楽しみがあります。
ワイルドベタ
![(熱帯魚)ベタ・スマラグディナ コッパー オス(ワイルド)(1匹) 本州・四国限定[生体]](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ud9HOI4QL.jpg)
品種改良される前の原種のベタです。上に紹介した改良ベタ達のような派手さはないですが、独特の渋さがありそこまで気性が荒くない種類もいるのでペアで飼育出来る場合もあります。
ただし、ワイルドベタはジャンプ力が強いので、水槽外へ飛び出してしまう場合あります。
飛び出し防止のために5~7cm水位を下げるか、フタをすることが必要になります。
ベタの基本的な飼育方法
ベタは単独飼育が基本
先述したようにオス同士は激しく争うためオス同士を同じ水槽内に入れることは出来ません。
ちなみにヒレが長く美しいのはオスなので販売されているのはオスがメインになります。
オスとメスを一緒に入れるのもペアですとオスがメスに喧嘩を仕掛ける場合があるので基本的には難しいです。
メス同士なら混泳出来る場合もありますが二匹だとどちらかがいじめられる場合があるので3匹以上で飼育すると逆にトラブルになりにくいです。
他の魚との混泳については後述します。
低床は敷かないベアタンク式がベスト
通常、水槽の底には砂やソイル等、低床を敷く場合がほとんどですが、ベタ飼育では基本的に低床を敷かずに飼育した方が良いです。
特に数リットルの小型水槽で飼育する場合、バクテリアの繁殖によって水質を維持するよりも頻繁な水換えによって綺麗な水を保った方が良い結果に繋がります。
小型水槽に低床を敷くと、すぐに汚れてしまい、雑菌等が繁殖してしまい、それが病気や不調の原因となるからです。
実際に、ほとんどのプロショップやベタ愛好家の水槽はベアタンク式で維持、管理されている場合がとても多いです。
小型水槽で育成可能だが狭すぎるのはNG
ベタは酸欠に強く水質の悪化にも比較的強いことから小型水槽で育成可能です。
ただし、ショップでも非常に狭い環境で売られているケースも目立ちますが、どんなに小さくても1.5~2リットル程度の水量は確保しないと健康的に長期育成することは難しいです。
他の熱帯魚でも同じことが言えますが水槽が小さければ小さい程、育成難易度が上がると思って下さい。それは丈夫と言われているベタも例外ではありません。
また、ベタはコレクション性の高い種なので下記のような複数のベタ飼育に適したセパレートがある水槽も売っています。
フィルターは無しでも良い
ベタは元々、水の流れが少ない場所に住んでいるため強い水の流れが苦手です。
そのため水換えが頻繁に出来るのであれば、フィルター無しでも大丈夫です。
フィルターを設置する場合は水量は弱めにし、ベタの負担にならないようにします。
飛び出しを予防する
ベタはジャンプ力が強いため(特にヒレが短いワイルドベタとプラカット)水槽から飛び出ししてしまうという報告が多数されています。
水槽に蓋をするか水槽の水位を下げるようにして飛び出しを予防しましょう。
ヒレのスレに注意
ベタの大きなヒレは他の熱帯魚より繊細に出てきている為、網で掬うときや水槽内の流木などにひっかかり傷がついてしまうことがあります。
それが原因で病気になってしまうこともあるので、ネットで掬うときは注意して下さい。
また枝流木や石などのレイアウト素材もベタのヒレにひっかかるような形状のものは設置しないようにしましょう。
冬はヒーターを設置
ベタは比較的、低水温にも強いですが、それでも熱帯魚なので冬はヒーターで加温しないといけません。水温が20℃を下回るようであればヒーターを設置し保温して下さい。
小型容器であれば水槽内の景観を邪魔しないパネルヒーターでも保温は可能です。
水温の上限としては他の熱帯魚と同様に30℃以下が目安です。
水質は中性から弱アルカリ性が理想
ベタの理想のpHについては弱酸性~中性程度がかつて常識となっていましたが、実際はpH7.0~8.0程度の中性~弱アルカリ性程度で飼育する方が良いです。
ワイルド(野生で採集された個体)は除きます。ワイルド個体については概ね酸性寄りの水質で生息していますが種によって異なります。
理由としてはベタはタイのファーム(養殖場)で育てられ、日本へ輸入されますがタイのファームで使用している水のpHが、概ね弱アルカリ性の硬度が高めな水質で育てられているからです。
ただし、ベタのpHの適応範囲は広いので弱酸性程度であればほとんどの種は問題無いと思います。
ベタを飼育する際にマジックリーフ等を使用してpHを下げる方も多いですが、日本の水道水は中性~弱アルカリ性の地域が多いので特に調整の必要は無い場合がほとんどです。
pHについて詳しくは以下の記事でも書きましたので宜しければご覧下さい。

ベタのフレアリングについて

ベタは前述の通り縄張り意識の高い熱帯魚です。ベタは同種間で縄張りを主張する際にヒレを目一杯広げます。
この行動をフレアリングと呼びますが、このフレアリングした状態は非常に見応えがあって美しいです。
ベタは単独飼育するため普段はフレアリングをすることはありませんが、意図的にフレアリングをさせることが出来ます。
その方法は簡単で手鏡をベタに前に持って行ってやるだけです。
フレアリングは観賞面だけでなくベタのストレス発散やヒレの状態を綺麗に保つために一日数分から10分程度を目安にやらせると良いでしょう。
一日中フレアリングをさせてしまう状態はベタの体力を奪ってしまいます。ベタ水槽を隣合わせにする際やバックスクリーンでベタ自身が反射してしまう場合もあるので、水槽の合間に仕切りを設置するなど対策を行って下さい。
ただし、上記の方法をとっても個体によってはフレアリングしてくれないベタもいます。
もしかしたら縄張り意識が薄い個体なのかもしれませんから、そのようなベタには無理にさせる必要はありません。
ベタに向いてる水草
ベタは時折、水草にもたれかかるように休みます。これが何ともかわいいので丸くて、大き目の葉を持つ水草を入れてあげるとそのような行動を見せてくれます。
具体的にはアマゾンチドメグサ辺りがいいのではないでしょうか。
アヌビアスのように硬い葉の水草はベタのヒレを傷つける可能性があるので、葉っぱが固い種の水草は避けた方が無難です。
水草を入れるスペースが無い場合は上記のおやすみリーフ(人工水草)を使ってみるのもいいでしょう。
ベタの餌について
ベタに適している餌は浮遊性があり小さい粒タイプのものがオススメです。
理由としてはベタは体の大きさの割には口が小さく大きな餌は食べることが出来ません。
また基本水面に浮かんでいる餌にしか興味を示さないため底に沈んだ餌は食べないです。
そのような特徴を考えられて作られたベタ専用餌が上記画像のキョーリン ひかりベタ アドバンスになりますので迷っている方はこちらをオススメします。
餌の量は基本一日5粒程度で十分だと思います。また出来れば一辺に水面に浮かべるのではなく一粒ずつあげるとベタが食べやすいです。
稀に人口飼料を食べてくれないベタもいますがその際は乾燥赤虫を与えてると食べてくれます。
実際に私が飼育しているベタは人工飼料を食べないどころか興味すら示さなかったのですが、乾燥赤虫を与えたらすぐに食いついてくれました。
ただし赤虫だけ与えていると栄養のバランスが偏ってしまいますので、人工飼料にも段々と慣れさせていくことが必要です。
ですので赤虫を与えつつ人工飼料を一緒のタイミングであげると人口飼料を餌として認識し人口飼料を食べてくれるようになります。
ベタの混泳について
ベタのオス同士の混泳は出来ないと先に紹介しましたが、他の魚との相性はどうか考えてみます。
まず前提としてベタにも性格の個体差がありネット上などの情報でうまくいってる組み合わせが、自分の水槽でもそのままそうなるかは、やってみなければわからないです。
ですのでやはり単独飼育が理想ではあるのですが、それでも混泳に挑戦したい方に基本的な考え方を紹介します。
結論から言うと遊泳層がかぶらない大人しい魚とならうまく共存出来る可能性が上がります。ベタは上層付近を泳ぐので下層から中層を泳ぐ縄張り意識が少ない性格が温和な魚を選びましょう。
また小型のミナミヌマエビは食べられてしまう可能性があるので基本は避けるべきです。ヤマトヌマエビは食べられることはありませんが、ベタを警戒し隠れるようになりコケを食べなくなる時があります。
具体的にはコリドラス系やオトシン、小型ラスボラあたりが無難だと思います。
避けた方がいいのは以下のような魚達です。
- 小型カラシン:ベタのヒレがテトラ達にかじられる可能性があります(ヒレの短いプラカットなら可)
- グッピー:遊泳層が被りヒラヒラした尾にベタが反応し攻撃する可能性があります
- グラミー系:近い種なのでベタが攻撃的になりやすい傾向があります
- 小型のエビ:ミナミヌマエビ位のサイズのエビはベタに食べられてしまう危険があります
ベタの水換えについて
ベタは小さい水槽で飼われるケースが多いため、通常の水換え方法とは少し違った方法をとることをオススメします。
通常サイズの水槽であれば基本である一週間で1/3程度の水換えで良いと思いますが2リットル以下のような水量が少ない水槽では頻度をもう少し多く(一週間に2~3回程度)、また全水量の半分以上を目安にすると良いです。
何故、高頻度で多めの水換えを推奨するかと言いますと、水槽が小さければ小さいほど水が汚れやすく水を綺麗にしてくれる硝化バクテリアも定着しにくいです。
通常サイズの水槽であれば繁殖したバクテリアを捨てない意味もあって水換えの量を抑えますが、そもそも極小水槽だとそのような期待も余り持てません。
であれば頻度を高めに、また量も多めに水換えを行った方が綺麗な状態の水を保てるという訳です。
そこで、そんなに多くの量を水換えしたら水質の変化にベタがストレスを受けるのでは?という疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。
しかしこれは水換え頻度を高く保つことによって水道水と飼育水の水質をほとんど変わらない状態になるので心配はいりません。
実際にベタ水槽の水を全換えしているショップ、個人の方は結構いらっしゃいます。
水量にもよりますので一概には言えないですが、要は水槽が小さければ小さい程、水換え頻度と量を多くして清潔な状態を保つことが重要です。
なお水換えする際はカルキ抜きをした上で水温は元の飼育水と合わせることは忘れない下さい。
以下にベタ専門ショップの水換え方法について解説されている動画を紹介します。このショップさんでは一週間に一回、水槽の全量を水換えしているそうです。
【まとめ】通常の熱帯魚飼育とは大きく違う点に注意
ベタはどこのお店でも売っているポピュラーな熱帯魚ですが、通常の熱帯魚飼育とは大きく異なる点がいくつかあります。
一番大きなポイントは低床を敷かないベアタンク式の小型水槽で、頻繁に水換えを行うことです。
一見、通常のアクアリウムの常識とは相反する方法ですが、ベタ飼育ではこの方法が推奨されています。